再現競争:古きを訪ねて新しきを知る
機械は
古くなると故障が出てくるようになる
形あるものは壊れるのだから仕方がない
だから
古くなった部品を
新しいものに入れ替えなくては
システムは維持できない
同じものがたくさん必要だ
同じであるということは
代替が効くといことだ
代わりが効けば
違うものを同じものとして扱える
同一性は
このような現実から判断されている
*
文字は
複製される
文字が伝える内容も
本が増刷されれば
その分増える
本が増えれば
本が古くなって読めなくなっても
その本の代わりが周りにどんどん増えてゆく
本が伝える意味も
本を読む人が増えれば増えるほどに増えてゆき
どんどん代替できるようになる
*
ウイルスは壊れやすいけれど
たくさん再生されているので
壊れても
壊れても
まだまだたくさんやってくる
1億生まれ
そのうちの1つが
1億自分を再現すれば
ウイルスは消滅しない
代替が効くということは
責任が軽くなるということでもあるのだろう
*
私には
私の代わりがいない
だから
その責任の重さに押しつぶされて
気が重くなることもあるのだろう
気が重くなるようならば
代わりが効く部分については
代わってもらえばよいとも思うようになる
けれど
代わりが効くということは
世間的な私の価値を下げることになるのかもしれない
などと思い躊躇したりする
価値が下がれば
相手にされなくなり
助けてもらえなくなるかもしれない
それは好ましくない事態である
世間との付き合いは気が重いことだ
しかし
気が重くなりながらも
価値ある私を再現してゆくことが
社会における私の役割だ
だがそれは
私のための私の役割でもあるのだろう
私は
まだ古くない
まだまだ新しい
根拠があるのかないのか考えぬままに
そう思いながら
私は
古くて新しい私を演じている