ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

再現競争:言葉による中間の省略


オタマジャクシは
ナマズに似ているけれど
カエルになるように運命づけられている


このことを知っていると
「オタマジャクシを指さし
 この動物はやがてカエルになるだろう」と
予言することができる


オタマジャクシの中には
カエルになる未来を導く
複雑で微細な仕組みがたくさん入っていて
これらがもれなく機能して
初めてカエルになることができる


例えば
オタマジャクシになる前の段階の話だが
発生の初期では
動物半球と植物半球で卵割の不平等が生じている
さらに進むと
植物局側から原腸が陥入し
原腸と近接した動物局側の細胞が神経に分化してゆく


このような
異質化の連続が
オタマジャクシからカエルに変態する過程でも繰り広げられ
鰓呼吸から肺呼吸に代わり
藻を主食としたオタマジャクシの時代から
ハエなどの小動物を主食とするカエルへと変貌を遂げる


こうした繊細で多彩な機構を知らなくても
経験則から
「オタマジャクシを指さし
 この動物はやがてカエルになるだろう」と
予言することができる


言葉は
このように繰り広げられてゆく中間を省略して
結論だけで
機能させてしまうところがある


予言する未来が実現するために通ってゆく
ひとつひとつの過程を完全に無視して
「オタマジャクシはカエルになるだろう」と
表現できるのだ


将来の夢や
達成すべき目標が掲げられ時
この言葉たちも
今と言葉が描く未来の中間に
事細かに表現されることはない


現実の中で
状況を見ながら
この中間を言葉で埋めながら
あるいは
この中間を黙々と歩み
夢や目標を実現してゆくことになる


オタマジャクシも
少しづつ前に進んでいるのだろう


いきなりカエルにはなれない


言葉により脚光を浴びることもない
地道な過程を黙々とこなしながら
カエルになる過程を
少しづつ前進させている


数多くの夢やオタマジャクシのうち
夢がかなったり
成長し成熟してカエルになれるのは
わずかな数だ


残りの多くは途中で潰えてしまう


それでも
黙々と
夢を追い
成熟を求めて
ひたむきに日々を過ごしている


命の尊厳は
そんな無謀な試みの途中に輝いている


だからなのだろう
夢がかない
あるいは
成熟すれば
その輝きはどこかへと移り去ってしまうのだ

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