今が過去へと流れてゆくと
様々な欲望も
満たされないままに
過去へと流れ去り
忘れられた

忘らるることなく
欲望を持ち続けていることは
時の流れに抗うことなのだろう

今生きているということも
時の流れのなかで
過去に流されず
今に踏みとどまっていることなのだろう

今に踏みとどまるために
継続的な欲望が肉体を支えている

空腹を満たす
深く浅く息をする

命の持続に必要な欲求と
その実践が繰り返されている

未来を先んじる自由も
過去に流れてゆく自由も
今にとどまる欲望にかき消され
今にとどまり続けている

そんな基本的な欲求とは別に
命の維持に必ずしも必要であない欲求が
沸き上がり
満たされぬままに
過去へと流れ
忘れ去られてゆく

留まる欲望に生かされている肉体が
過去に消え去った欲望を眺めては
「なぜ
　あの時は
　あんなに情熱的に
　それを欲していたのだろう」
などと
感慨深く思い出したりする

その時その時に
欲望が生きがいとなり命をとどめ
橋渡ししながら
命を今に紡いでくれた

それを懐かしく振り返りながら
ゆっくりと過去へ流れてゆく時間の流れに掉さして
肉体を
次の今へ
次の今へと送り続ける