ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

現象と構造:「今見えている空」という表現


子供の頃は
言葉を知らなくて
「あれ あれ」と言い
年を取ると
言葉が出なくなって
「あれ あれ」と言う


思考は
確かに
言葉で考えることが多いが
「あれをこうして」などというあいまいな言葉でも
思考は思考である


考えようによっては
「赤に黄色みがかかった明けの空」という言葉より
「今見えている空」の方が
一緒に空を眺めている人に
正確なイメージをもたらしてくれる


「今見えている空」は
言葉だけでは特定しえない言葉だ


「あれ あれ」というのと同じで
言葉だけではなく
視覚などの感覚が働いて
はじめて知覚できる言葉である


言葉には
感覚に助けを求める機能もあるということだ


言葉だけで
知覚世界は完結していない


「あれ あれ」
「それ それ」と
感覚に助けを求めながら
言葉が世界を構築する


こうして構築された世界にとって
初めて見るものは
好奇心の対象となる


名前がまだないその対象に
すでに名前が付されているのか確認したり
名前を付けようかとあれこれ思考することにもなる


こうしたあれこれをしている間
その対象は
「今度のあれ」や
「例のあれ」などと呼ばれたりする


言葉だけでは語れない存在である


まあ
考えてみれば
どんな一瞬も
「あの時」と言ってしまえば
語りながら何も語り得てない存在になりそうだ


「あの時」と
特定しながら
何時と特定しているのかわからない
奇妙な言葉だ


指示代名詞が
時空をくまなく監視しているようだ


時空の全てを
「それ」で指し示せるということでもあろう


言葉の世界を中心とすれば
すべては「それ」なのだ


神も「それ」と表現される


言葉の世界では
「それ」は神よりも大いなる存在と考えられる


そして
「それ」のなかに「これ」がある


それは
時間の中に「今」があるようなものなのだろう


今ここにこれがある
それではないこれがある


時がたち
これは消え
別のこれが現れた


この「これ」は
以前「あれ」だった「これ」だ
などなど
指示代名詞で思考ができる


こうして
指示代名詞により作り出される世界が
究極の一般論になるだろう


存在していない「それ」も存在する世界を
言葉が紡ぎだす

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