ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

局在と遷移:反応の循環による結びつき


記憶にないものに対しては
沈黙しなければならない


年を取ると
言葉が出てこなくなる


「あれあれ」
「そのなんだ」


言いたいことが頭の中に在るのだが
きちんとした言葉にならない


言語ゲームは
ルールを忘れると参加できないらしい


言いたいことは「ある」が
それに該当する言葉は「ない」


この「ある」と「ない」の間を行き来する間に
時間が経過し
その時間を穴埋めするように
「あれあれ」
「そのなんだ」と意味の通じない言葉を繰り返す


記憶の中で
ものと言葉が結びついている
ことと言葉も結びついている


だから
記憶をうまく取り出せなくなると
会話が途絶える


きっと思考も途絶えるのだろう


ものごとから言葉に変換する反応と
言葉からものごとへ変換する反応を繰り返しながら
思考し
記憶しながら
会話を成立させている


反応の上流に
ものごとが配され
次に
言葉が配されしながら
ものごとと言葉の間で反応の循環が生じている


循環だから
言葉が出てこない場合もあれば
ものごとが出てこない場合もある


どちらも出て来て
循環が成立し
ものごとと言葉が結びついている


少し厳密にいえば
ものごとの記憶と言葉の結びつきだ


反応することもなくなり
反応されることもなくなれば
結びつきは消えてゆくということだ


地上に生きるということは
地上に反応し
地上に反応されることであるように
言葉は
記憶の上流として反応されたり
記憶の下流として反応したりしながら
記憶と結びついている


記憶力がいいということは
より多くのことと結び付けるということだろう


より深く知を愛するということは
より多くの記憶と戯れることなのだろう


だから知を愛すると
記憶力が恋しくなる


いくら知を披露しようとしても
記憶にないものに対しては
沈黙せざるを得ないのだから仕方がない

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