不思議な場所がある

隠れながら
たくましくなる場所がある

何も隠れる必要もないのだが
所作を隠したがる場所がある

台所とお便所だ

台所は
生命の死骸をお料理に変える場所だ

お便所は
消化した生命の残骸を捨てる場所だ

口から肛門へつづく消化管の
入口と出口にまつわる場所である

生きる生々しさを
覆い隠しながら
享受する

生命の喧騒が華々しく展開され
ひと時の安らぎが醸し出される

生命の悲しみと喜びが交錯する

美しいばかりの祈りの場所ではない

現実の中で
気取ってはいない祈りが交錯している

生ごみや排せつ物のにおいが
神聖さを汚しながらも
それを乗り越えようとする精神に
清らかなる心が育成されてゆく

そんな台所やお便所は
大切な聖なる場所と崇めなければならぬのだろう

不思議な場所がある

必ず家の中にある

生きている証の場所である