犬には
個性的な品種がたくさんある

チワワのように小型犬から
セントバーナードのような大型犬まで
多彩なレパートリーを取り揃えている

しかし
どの犬種であっても
犬の範疇を逸脱していない

どの犬種も
犬を踏襲しているということだ

オオカミと犬の区別は難しい時もあるけれど
ハイエナやキツネからは
なんなく犬を区別できそうだ

ましてや
猫やライオンからは
簡単に犬を区別できる

犬種の知識を蓄えているから
このような区別をできるのかもしれないが
この知識を蓄える過程で
犬に共通する特徴を把握するしてきたので
犬を他の動物から区別できるようになっているのだろう

「犬らしさ」

見た目だけではなく
においや
しぐさの特徴に
どの犬種にも共通する「犬らしさ」を
見出しているところもある

逆に言えば
犬が
犬の伝統を引き継ぎ
その伝統から逃れられないままに
犬を生き抜いてくれているから
「犬らしさ」を見出すことができていることになる

犬の伝統を捨て去れば
犬でなくなるのだから
当然のことではあるのだけれど
犬であれ蠅であれ人間であれ
伝統を引き継ぎ承継してゆくことは
言葉でいうほど簡単なことではない

伝統を守るという
高い意識のもとに研鑽を積み
伝統は守られるのだ

ここでいう高い意識というものは
無意識や
もっと根源的で
意識でさえないものを含んでいるだろう

心臓は
心臓としての伝統を守り動き続けている

この心臓が伝統を守る意識は
頭の中で動き回るような意識ではないが
この意識がなければ
心臓は伝統を守ることができず
心臓の機能を果たすことができなくなるような
大切な意識である

このような意識に導かれ
生命が躍動し
様々な現象が再現されている

様々な意識が織りなす再現競争が
生命の多様性をより豊かな高度なものに育て上げてきた

自然は
意識に満ち溢れている

だから美しくもはかないものなのだろう

＊

それぞれの国で
それぞれの主義主張が織り交ぜられたプロパガンダが
美しい聖書のように流れている

犬は犬としてのプロパガンダを
忠実に守り
今を生きている

「自分を守る力こそ善だ」

戦争の中
善も
相対的な存在として声高に語られた