ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

循環と義務:清い死を避けようとする苦痛


昨日
苔に覆われた原生林にいた


全く
人の手が入っていない訳ではないが
私がいる時間
私以外の人間には出会わなかった


鳥の声に交じり
低空飛行の飛行機の音が聞こえてきたが
総じて静かな場所だった


絶え間なく
小川のせせらぎが聞こえていた


私は漠然と
「この林と一体になりたい」と感じた


甲梶田のは
私がよそ者であることを
強く意識したためでもあるのだろう


帽子をかぶり
服をまとい
靴を履いたよそ者が
原生林を歩いているのだ


苔むした岩に座っていると
苔が蓄えていた水が
パンツを伝わりお尻へと浸みてきた


これくらいのことで
座ることをやめにしたら
一体になるなんてとてもできない話だ


もう少し座り続ければ
何らかの一体感をちょっとでも味わえるかもしれない
などと
思いながら座っていると
小蠅が集まり始めた


この原生林に潜んでいる虫たちは
私を歓迎してくれているのだろうか?


すると
奇妙な妄想に囚われた


無数の虫たちが私を取り囲み
蝕まむのだ
やがて
私はこの虫たちに食われ
朽ち
原生林の一部になった


それは
ある意味
清い死なのかもしれない


この清い死を
避けるかのように
私は来蠅を追い払った


私から何かを得ようと集まってくる虫たちに
私は不快感を募らせる


この不快感が清い死を私から遠ざける


痛みや苦しみを受け入れ
打ち勝ってこそ清い死へと近づき
この原生林と一体になることができるのだろう


私はまだまだ
不快感がもたらす義務と共に生きてゆくらしい


苔むした岩から腰を上げ帰路に就いた


濡れたお尻に風が当たり
心地よい冷感が後ろ髪を引いてくれているようだった


私は
私の不快感を避けながら
私の心地よさを求め
またこの森を訪れることだろう


私は
この森に私を諮り
拒否されながらも
また舞い戻るのだ

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