サケが回遊し
生まれた川に戻ってくる

再帰性

再び元の場所に戻ってくるのは
何もサケばかりではない

地球も
太陽を一周して
また
元の場所に戻ってくる

夏至も冬至も春分も秋分も
それぞれ
また
戻ってくるのだ

心臓の拍動も
一拍動ごと周期を描き
また元の状態に戻ってくる

細胞周期も
細胞分裂の直後から
次の細胞分裂へと準備が進められ
また細胞分裂直前の状態に戻り
細胞分裂を繰り返す

様々な秩序が
再帰性を描き
循環している

降りやまぬ雨はなく
晴れ渡る空が再来する

山の上に現れる特徴的な雲のように
様々に要因が重なって起こる偶発的な現象として
再帰性が観察されることもあるが
生活環のように
生命が
それぞれに意図的に描き出している再帰性がある

親と同じ姿が合われること自体
偶発的ではなく
必然的な再帰性だ

様々な必然的再帰性が
様々な触媒により
様々な必然が実践され
予定された軌道に従い
循環的に繰り返されている

白色という言葉も
意味になったり
音になったり
文字になったり
英語になったり
日本語になったりしながら
まわりまわって
再帰性を繰り返している

再帰性を維持できない言葉は
消滅し
再帰性を維持できない生命は
絶滅する

心臓が元の状態に戻らなくなると
心不全ということになるし
人工衛星が元の状態に戻らないと
落下したり宇宙の果てへと飛んでゆくことになる

一晩寝て
機能の疲れが取れると
また今日を頑張れる

同じことを繰り返す喜びの中で
何か新しい再帰性を創ることができれば
幸せだ

長生きは
その繰り返しの結果ということなのだろう

長生きをしたいということは
再帰性への意思ということになる

もっともっと繰り返したいのだ

この繰り返しのために
理性は生まれてきたのだろう

理性は
再帰性を求め続ける

物語も
哲学も
宗教も
ただ
それぞれに再帰性を求め続ける

そして
再帰性の為に力を求め発揮し続ける