欲望は
ある状態から別の状態への移行を促している

ある状態から別の状態に移行するさまを
つぶさに観察し
状況に応じて
適切な手出しをする

この手出しの良し悪しで
欲望が達成できるか否かが決まってくる

より適切な手出しが
欲望の実現のために必要となる

自由などない

自由にのんびりしていたら
欲望など実現できるはずがない

やる時には
やるべきように
やらなければならないのだ

欲望の対象を囲い込み
加えるべきものを加え
取り去るべきものを取り去りながら
ある状態から
別の状態へと移行させるのだ

これは
生体内の酵素反応と
相似した実践だ

酵素は
反応前の化合物である基質を取り込み
それに分子を結合させたり
分子を分離させたりして
基質を別の化合物へと作り変えてゆく

酵素も
やるべき時に
やるべきことを
やるようにできている

酵素は
このような相似において
欲望の原型をなしていると言えるだろう

生化学反応を実践するという
明確な目標があり
その目標をより現実的に実践できる酵素が
自然選択されて来た

酵素の目的は
橋渡しである

右から来た化合物を
加工して
左に渡すのだ

考えてみると
欲望の目的も
橋渡しだ

先程からちょっと先の時間へ
昨日から明日へ
去年から来年へ
世代から世代へと
欲望が橋渡ししてくれている

たくさんの欲望があり
たくさんのものを
橋渡ししてゆく

たくさんの酵素が
たくさんの欲望を実践し
命が橋渡しされてゆくのだ

欲がなくなれば辞めればよいのだが
そうそうやめれないから欲望である

実にうまくできている

欲望たちが橋渡ししながら連帯し
欲望が欲望を産む

このエスカレーションにより
欲望が減退しないようにできているようだ

ウイルスも
立派に
欲に駆られて生き延びている

ご苦労様なことであり
ありがたいことである