ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

局在と遷移:読書というプチ独我論体験


本を読んでいる時
本以外の現実は
遠く向こうに追いやられ
意識は
両の手のひらに乗るような小さな本の中に埋没する


本が醸し出す世界に没頭すると
本以外の現実は
もはや意識にとっての現実ではなくなる


その現実は
本が醸し出す世界を阻害する邪魔者に成り下がるのだ


このような独我論的な意識の中に引きこもり
現実を忘れると
身を危険にさらすことになる


安全な場所で没頭すればともかく
江戸の世で
本に夢中で参勤交代の殿様を無視すれば
打ち首にされてしまうやもしれない


こうした
ある種特別な状況で
本の中の物語が進行する


その物語の主人公たちこそが現実であり
本の外の現実は非現実になってこそ
物語は佳境に入ることが出来るのだ


命たちは
それぞれの内に持つDNAが描く物語に
夢中になりながら生きている


その物語にそぐわない現実に対しても
無謀に挑戦しながら
その物語を着実に現実のものとして実践を繰り返す


周囲が醸し出す現実よりも
内なる物語が醸し出す現実の方が大切なのだ


この非現実的な対応こそ
生きる力だ


蜘蛛の巣にかかった蝶は
蜘蛛の糸から逃れようと必死には羽ばたき
蟻地獄に落ちた蟻も
その砂地にできた傾斜を必死に登る


独我論的夢想が
現実とぶつかりながら
その夢想を遷移させゆく


生き物たちは夢を見る


その夢の中で
現実と対峙しながら生きてゆくのだ

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