ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

局在と遷移:ワインの真価の進化論


味わわられることないワインの液体は
物理化学的な液体として存在し
味わわれることにより
はじめて
味覚を刺激する液体として存在しうるようになる


ここに
ワインの味覚に
ワイン以外の感覚器が
ワインの価値を決める要素として登場することになる


たとえば
上手いとされるワインであっても
味覚異常の人に味わわれた場合
まずいと評定される可能性がある


ワインは
味覚異常の人に味わわれると
その真価を発揮できない
と表現することもできようが
その味覚異常の人にしてみれば
まずい液体というのが
そのワインの真価としか言いようがない


この
感覚器の性能に伴う相対性から
ワインの価値の絶対性を維持するために
味が異なるワインに
それぞれラベルが付され
どのラベルのワインがどのようにうまいのか品評し合い
ワインの味覚評価を統合する努力が営まれている


このような努力により
ワインの味覚評価の局在化が維持され
その局在化の中で
相対的な評価が絶対化されたものとして遷移してゆく


そして
「このワインはうまいはずである」
「うまいワインはこういうものだ」
という
教条主義が熟成し
味覚評価の局在化が安定し
よりサステナブルな実存として成立してゆく


こうした過程で
うまいとされるワインが厳選されてゆく


うまいワイン競争のなかで
淘汰選択が繰り返され
うまいワインとしてのラベルが
厳選されてゆく


ワインにとって
人間の味覚は
生命進化の環境のようなものなのだろう


環境が変われば
生き残ってゆくワインも異なってゆくのだろうが
生き残ったワインは
味覚との相性が良い適応的なワインであるには違いない


ワインはなくても
人間の命に不可欠なものではない


しかし
あればあったでありがたい存在だ


環境にとって
生命はそのように
あればあったでありがたい存在なのだろう


このありがたい存在の総和としての環境は
その存在がこかくすれば
また別の環境へと遷移するのであろうから
その環境が維持されるために不可欠なのだからありがたい


ワインがなければ
人生もまた少し別なものへと遷移するのだろう


その遷移はわずかなものなのかもしれないが
そういうありがたい存在がたくさん存在して
はじめて人生が今のようにあるのだから
その一つ一つがありがたい存在なのだろう


人生の真価も
そんなありがたい存在との連なりの中に在るのであろうから
一人粋がっていても
どうこう出来るものではないのであろうから
人生は思い通りに進まない道理となっているようだ

局在と遷移:本質の散在的局在


ワインの本質は
ワインボトルの内側に封じ込められた液体にあるのか?
そのワイボトルのラベルにあるのか?
そのラベルが持つ歴史にあるのか?
それとも
人間の味覚という太古から培われた機能にあるのか?


これらのどこか一点にワインの本質があるのではない


こられのものが本質に欠かせない部分とあり
散在している


この散在している部分が
それぞれ調和し合い
ワインとしての本質を統合され
そのワインの本質としての局在が奏でられている


散在しているものたちの
調和による統合としての局在


右手と左手は
離れていても調和している


右足と左足も
離れているからこそ歩行する機能を担い
その調和の中で統合されている


離れていても
反応の連鎖の中で
一体が形成されている


この連鎖の総体として
局在が維持されている


うまく調和しない反応を
排除しながら
局在が維持されている


本質は
そうして維持されている連なりの中を
散在しながら循環している

局在と遷移:アポステリオリな局在化


言葉は
それが言葉として機能すると
何らかの局在を産む


常に
言葉が機能すればするほどに全体は遠ざかる


単語は
それが意味する対象と
それが意味しない対象を区分することにより
成立している


意味する対象を局在化することにより
成立しているということだ


全体ではなく
部分として機能しているのだ


単語の周囲に
意味としての実存が局在している


その昔
「厠」という単語の周りに局在していて意味は
やがて
「便所」という単語の周りに局在しはじめ
いまや
「トイレ」という単語の周りに局在し始めた


その昔
「バンド」という単語の周りに
腰に締めるズボン用の帯としての意味が局在していたが
その後
「ロックバンド」が「バンド」と省略されるようになったこともあり
ズボン用の帯としての意味は
「バンド」という単語の周辺から離れはじめ
ズボン用の帯としての意味は
「ベルト」という単語の周りに局在するようになってきた


「バンド」という単語に
アプリオリな意味は宿っていないのだ


アポステリオリに意味が局在しているのだ


このアポステリオリな局在化が
言語を維持している


その意味をその単語に局在化することの
有益性
有害性が評価され
両者のが統合評価である有用性が高ければ
局在化が推進され
逆に
有用性が低ければ
その局在化は緩んでゆく


こうして局在化が緩むと
その単語の意味は不明瞭なものとなり
有益性は低下する


単語は
局在性が保たれ存続してゆく局在だ


使われなくなった単語は衰退する


局在化していないその他全体へ回帰してゆくのだ