月の裏側を見ることができない

それどころか
地球の裏側や
自分の頭の後ろも
見ることができない

食べた食物が
胃に入って
それがどうなっているのかも
見れない

科学技術の進歩で
衛星中継で
地球の裏側や
自分の背後の出来事を
画像としてみることができるようになった

胃カメラを使えば
食べた食べ物の胃の中の様子も
見ることができるのかもしれない

しかし
肉眼ではお目にかかれないことには変わりない

現実の一部しか
意識は表現してくれないようにできているらしい

要するに
意識に現実の断片が入り込むようにしかできていない

現実の一部の断片しか
意識にのぼることがないということだ

意識と現実の共役は
このように完璧なものではなく
不完全で
部分的な連帯に限られている

逆に
この不完全性において
個体の自由な独立性が確保されて
非現実的な妄想の余地が
開かれている

より自由で現実から独立した妄想をするには
目を瞑る方がいい
耳もふさぐ方がいい
鼻もふさぎ
布団の中に潜り込んで
息を殺して
自分だけの世界を作る方がいい

不都合な現実を遮断し
純粋な世界を創造できる

天国も地獄も
夢や作り話も
目を閉じて思いをはせることができる