太陽が東から昇り西に沈む

この太陽の就航がなければ
東という言葉や
西という言葉も
孤立に苛まれることになるのだろう

言葉は
目に映る世界で起こる現象と密接に関連している

言葉は今だけではなく
歴史とも密室に関連している

長い歴史の中が使われながら
その意味が洗練され足り広げられたりしてきた

言葉たちは
物質世界と
歴史世界に根差している

ちょいとあらまの中でひらめいた言葉にも
空間的な広がりと
時間的な深みがまとわりついている

このまとわりつきがあるので
その言葉を操る意識は
空間と時間を旅することができる

宇宙の果てに飛び立ったり
太古の世界をも旅したりする

そして
ありもしない未来を妄想したりする

そんな言葉は
初めから意識の中に備わっていたわけではない

言葉は外からやってきた

その言葉たちに馴染むに従い
その言葉が支配する世界の中に
私もその一部として入り込んできた

こうして
私の中に
言語的メタバースの世界が生まれた

感覚的メタバースの世界に混然としながらも
時に
そこから飛びだして
私は
宇宙や海の底
過去や未来に向かうのだ

その世界では
太陽は
西から昇って東に沈んだりする

太陽が
西から昇って東に沈むのも
間違いと言い切れない世界に
私は旅立つ

そんな現実に根差していない世界での思考は
現実世界では通用しないに違いない

この実用性において
思考世界は現実に支配される

現実に支配された思考世界には
夢がない

世界を変える夢がない

その息苦しさに実用性をないがしろにしながらも
根無し草の言葉を
仮想空間に遊ばせてみたくなるのだろう

妄想が
時に現実を変えてゆくから
現実にはとても奇怪なところがある

そして
その奇怪さを笑い飛ばしてみたりする

人間以外の動物は
笑わないという話がある

他の生き物には
こんな奇怪さが少ないのだろう

人間は笑ってしまうほど
奇怪な生き物に進化できたということだろう