ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

思考と実体:大空に筆をとる


青空に
墨汁を滴らせ
でかでかと「大空」と描いてみる


思考の世界は何より大きい
宇宙よりも大きい


この世界の中で
大空よりと同じくらい大きい
いやもっと大きな筆をとり
「大空」と描いてみせる


「どうだ
 空は広い
 でも
 頭の中は
 もっと大きい」


こうして
空に絵が描かれる


空絵事ができあがる


その中で
私は小さくこずんでゆく

思考と実体:集団の尊厳と個人の尊厳


たくさんの人間がいる


私以外に
とてもたくさんの人間が生きている


みな
同じ人間としての特徴を備え
他の動物とは異なる人間として生きている


アリの行列のように
大都会の駅から
人が次々と往来を歩いてゆく


コピーされた原稿が
次から次へと
コピー機から出てくるように
人間が地下道から現れてくる


生物学的には
人間もコピーに相違ない


その人間が描く思考の世界も
コピーに相違ない


同じ法律が
たくさんの人間の頭の中にコピーされる


写経された経文が
たくさんの人間の頭の中にコピーされてゆく


印刷機でコピーされた新聞が読まれ
たくさんの人間の頭にコピーされてゆく


皆と同じように振る舞おうとする気持ちも
どこかでコピーされているのだろう
同じような人間が
また現れて
また消えてゆく


同じような時計が
生産されている


同じような時を刻み続ける


同じ時間を刻めない時計は
あまりよろしくない時計と揶揄されて
憂き目を合わせられるに違いない

思考と実体:幸せへの前例踏襲


私は
私以外のものにはなれない


猫になりたくても
猫の着ぐるみを着るのがせいぜいである


猫ではなく
同じ人間でも
他人にもなれない


私は
私でい続けなければならないらしい


私の意識が
他のものになろうと決意したところで
この事実は変えられない


この意識を無視した同一性の保持には
前例踏襲が寄与している


私の細胞は
それぞれに
前例踏襲しながら
私を維持してくれているからである


この私の維持作用として前例踏襲が
一部改変されると
その改変された範囲で
私は変わるのだが
改良を試みても
なかなか良くなってくれないから
良くしようとする努力がとん挫してしまうことになる


逆に
事故にあったり
病気になったりして
前例踏襲機能に陰りが出ると
みるみる
私は悪くなってゆく


意識まで
変わってゆく


運が運を呼び
自分がどんどん良い方へと変わってゆく幸運に
巡り合えた人は幸せである


きっと
意識まで変わってゆくのだろう


前例が踏襲されてゆく


運が運を呼んでゆく


不運が不運を呼んでゆく


小さな運を拾いながら
小さな幸せを咀嚼しながら
踏襲し
前へと歩いてゆかねばならないだろう


凍てつく大地を歩いていると
暖かな日差しが戻ってきた


その時の喜びを
心に刻みながら
一歩また一歩
歩みを進めねばならないだろう


こうして
良いことを集め
悪いことを捨てながら歩みを進める


自然選択と
自然淘汰を重ねて進化をしてゆくようなものである


良いものを前例踏襲してゆけば
少しづつ良くなってゆくに違いない