ルアーなお金たち、言葉たち、命たち

砂上の楼閣を上手に維持する共役反応の数々に感謝です。ルアーは反応の連鎖の象徴です。

局在と遷移:踊らされながら失うということ


車がまだ珍しい時代に生まれた


道路は狭く
でこぼこ道だった


道路わきの電柱は木製で
コールタールが表面に塗られ
暑い夏の日にはその表面がとろけていた


たまに車が通ると
土ぼこりが上がり
排気ガスの匂いが
その土ぼこりに交じっていた


その匂いに文明を感じたのか
友達と争うように
その匂いを嗅いだ


わずかに
馬車が残っていた


車の排気ガスと
馬の糞の匂いを比べ
車の排ガスの方がはるかにいい匂いだと
言い合った


文明に育てられてきた


道路が広くなり
アスファルトで舗装されるたびに
嬉しくなった


建物が建ち
街がにぎやかになるたびに
嬉しくなった


文明に惹かれるのは
本能的に
文明は人類を守ってくれる素敵な存在であると
感じるからだろう


素敵な存在を身の周りにおける幸せが
文明が進めば進むほどに増してきた


文明にもいろいろある


芸術や宗教も文明なら
科学も文明だ


精神文明と
物質文明


どちらかがあればよいというものではない


海の香り
苔の匂い
樹木の香り
谷川の匂い


どれかがあればよいというものではない


一度に囲まれればよいというものでは決してない


別の空間で
別の時間で
それぞれを愉しむ


この愉しみの傾向が
それぞれの空間を拡げ
それぞれに時間をかける努力を傾け
時空を変遷させてゆく


愉しみの中に埋没し
失った時空を
時に寂しく思い出す

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